2018年01月13日

【特別編】メッセージリレー 第12回 加藤哲礼さん

すばるショパンフェスティバルのナビゲーターを務めていただく加藤哲礼さんに、「ショパン・マラソンコンサート」の聴きどころを解説していただきました。

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「9人のピアニストと巡るショパンの旅路」
フレデリック・ショパン。ピアノ音楽の代名詞であるこの天才の人生を、9つの個性が、すばるホールのステージに蘇らせます。これだけまとまった数の作品を一日でまとめて聞くことができる機会は、世界的に見ても、そう多くありません。故国を愛したショパン。人間を愛し、孤独を愛し、そして音楽を愛したショパン。1月20日は一日、「ピアノの詩人」の豊かなしらべに身をゆだね、彼の儚くも美しい人生を共に旅していきましょう。
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◇第一部
壮大な本日のガラコンサートのオープニング、第一部には、ショパンらしさ、ショパンの個性が凝縮された作品を並べてみました。もぎたてのフレッシュな感性が炸裂する初期のスケルツォやノクターン、どこか遠くを見つめるようなバラードや舟歌のひそやかな語り、英雄ポロネーズの情熱と気品。多彩な小品が連結して巨大な像を結ぶのもショパンのトレードマークですが、その頂点、「エチュード集 Op.25」の全曲演奏をお楽しみいただきます。

演奏は、ピティナ・ピアノコンペティション特級に入賞した3人の俊英が担います。三好朝香さんは、作品の世界を全力で生き抜く、根っからの芸術家肌。すべての音に濃厚な情が宿り、剛毅な信念で曲の持つメッセージを強烈に語りかけます。一転、三重野奈緒さんは、音楽の襞に行き交う、きわめて繊細な情の往来に丁寧に寄り添い、真摯な歌に昇華させる純粋無垢なピアニスト。彼女のあたたかなまなざしは常に、美しい弧を描いてふわりと作品に溶けていきます。山ア亮汰さんは、すばるホール初登場の特別ゲスト。エチュード集Op.25全曲という峻厳で険しい峰々を登りこなす豪胆な若者は、今、日本中に彼をおいてほかにありません。作品に向けるまなざしの強さ、みなぎる意志、何物をも怖れぬ英気。まったく新しいショパンの世界を鮮烈に描き出すに違いありません。
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◇第二部
第二部では、ショパンの珠玉の名曲のなかでも、特によく知られ、耳にする機会の多い作品をたっぷりとお楽しみいただきます。別れの曲、革命のエチュード、小犬のワルツ、葬送行進曲、遺作のノクターン、そしてこれでもかと名旋律が湧き出すバラード・スケルツォ・幻想曲…。誰もが愛してきたショパンの世界にどっぷりと浸ってください。

十代の峻烈な才能が、名作の世界に誘います。最年少の吉原佳奈さんは、音楽を心から信頼できる健やかで伸びやかな音楽性を持ち、フレーズが向かう行き先を直感的に感知して美しさを増幅することのできる、豊かな感性の持ち主。太田糸音さんは、大学に「飛び級入学」した俊才。彼女がひとたび切れ味鋭い刃をかざせば、鮮やかなその切り口からは色とりどりの音のエキスがあふれ出し、作品に新たな命が宿ります。その閃光のまぶしさ!
第二部の最後、若いピアニストたちが描くこの特別な一日の扇のカナメの位置に、すばるホールにも縁の深いプロフェッショナルな演奏家をお迎えします。今野尚美さんは、英国王立音楽院に長く学んだ本格派。イギリスは古くから、奇をてらわずに真っ向から作品の美しさを表現する気品豊かなピアニストを数多く生み出してきた国。ごまかし、まやかし、一切なし。音楽が本来持つ美しさをとことん信じきったノーブルで成熟した解釈で、ショパンの音楽そのものが持つメッセージを普遍的に伝えてくれるでしょう。
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◇第三部
第三部には、ショパンの心の深奥に分け入るような、とっておきの特別な作品を並べました。故国ポーランドを最期まで愛し抜いた彼の魂、マズルカとポロネーズ。旋律が今この場に生まれ出るように色とりどりの音が横溢する即興曲、前奏曲、子守歌。そして、今を決然と生きてゆくラスト・ソナタ、第3番。ショパンの心象風景の世界を、共に歩いていただきます。

水本明莉さんは、音楽の核心に共振し、作曲家の生きざまそのものを狂おしいほどの情をもって抱きしめる、生まれながらの音楽家。天から降り注ぐ光にも似た独特の音色を持つ、純潔の語り部。鯛中卓也さんは、透徹した美意識に貫かれた強靭なアーティストであり、ピアノという楽器の可能性を限りなく慈しみ、詩的で香り立つようなピアニズムに生きる孤高の人。酒井有彩さんは、作り手から聴き手へ、あるいは師から弟子へ、人と人とのあいだに張り巡らされた<クラシック音楽>という穢れなき人間の営みの意味を、若くして本能的に理解している稀有なピアニスト。音楽を前にしてひたむきに今を生きる3つの無垢な個性の真摯な祈りを目と耳に焼き付けてください。

こちらでもご紹介いただいてます。
⇒ピティナ・ピアノコンペティション特級フェイスブック
https://www.facebook.com/ptna.tokkyu/


posted by subaruhall at 09:07| Comment(0) | 日記

2018年01月10日

【特別編】メッセージリレー 第11回 寺岡清高さん

「ロマン派のピアノ協奏曲」で指揮を務めていただく寺岡清高さんから、協奏曲の聴きどころを解説していただきました。
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演奏会のプログラムに協奏曲を一曲入れると、コンサート全体が華やかになるので、指揮者としてプログラミングをする時には、ソリストの有無は必ず考慮します。とりわけピアノは、音響的にも見た目にも最も華やかな楽器ですが、今回はなんとソリスト三人によるピアノ協奏曲の聴きくらべという、非常に贅沢な演奏会です。

シューマンは、室内楽的かつ細かな和声付けに特徴のある作曲家です。ピアノ協奏曲では第2楽章にそうした個性がよく現れています。反対に、元々独立した曲として構想された第1楽章は、劇的で非常に変化に富んでいます。第2楽章から華やかな第3楽章へは、第1楽章の主題を利用して、切れ目なく演奏されます。途中二度出てくるヘミオラ(二小節で大きな三拍子が一つ入るリズム)以降の部分は、指揮者泣かせで有名な部分で、一切気が抜けません。

初めてウィーンを訪れたショパンは、自作のピアノ協奏曲の必要性を痛感したようで、故郷のポーランドに戻ると早速、短期間に二曲の協奏曲を完成させて、再びウィーンを訪れます。とりわけ規模の大きい1番は、若きショパンの気概というか気合いを感じます。指揮科の学生時代、授業で第2楽章の伴奏の難しさを散々教わった思い出があります。

上記二曲に比べて、格段に短いのがリストの協奏曲です。しかも四つの楽章が有機的に繋がって切れ目なく演奏されるので、聴感上はさらに短く感じるかも知れません。リストは交響詩の始祖ですが、曲全体を統一するために共通の主題を各部に使う循環形式を確立しました。この協奏曲ではその循環形式に加え、第2楽章から全曲の終わりに向けて、徐々に加速していくように設計されているため、手に汗握る抜群の演奏効果があります。第3楽章で活躍することから「トライアングル協奏曲」という渾名も。

以上三曲の個性の異なる協奏曲に、これまた三様のソリストによる共演。オーケストラと指揮者は同じでも、ソリストに感化されてそれぞれ異なる響きになるはずです。どうぞお楽しみ下さい。
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2018年01月04日

メッセージリレー第10回 東海林茉奈さん

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(1) この大変興味深いフェスティバルに、以前からずっと憧れ続けていた曲であるシューマンの協奏曲で参加させていただけることを心から嬉しく思い、感謝の気持ちで一杯です。そして同時にその責任も強く感じております。私自身この曲に心から感動している一人なので、この曲の魅力をお伝え出来るよう精一杯弾かせていただきたいと思います。

(2) 私は今回シューマンのコンチェルトを弾かせていただきます。
私には、シューマンの曲は人間が生きていく上で感じるであろう、ありとあらゆる感情が詰まっているように感じられます。とても個人的で人間的な音楽だと思います。
シューマンのコンチェルトはシューマンがクララとの結婚を勝ち取った翌年にまず第1楽章のみ作曲され(この時点では第1楽章として書かれたのではなく、『ピアノと管弦楽のための幻想曲』として書かれました)、その4年後に改作し、2.3楽章を書き加えて完成されました。ドラマチックな幕開けで始まる第1楽章、間奏曲と題された短く愛らしい第2楽章、そして休みなく続くエネルギーに溢れた第3楽章の全3楽章から成り、どの楽章からもクララへの愛がひしひしと感じられます。
またシューマンの協奏曲は他の作曲家の協奏曲よりも、よりオーケストラと密接に結び付いたアンサンブルになっており、どちらかと言うと室内楽に近い作りになっています。指揮者の寺岡先生、そして大阪交響楽団の皆様と心を通わせて、いいアンサンブルが出来たらと思います。

(3)思えば私にとってショパンとは、音楽をやっていて良かったという喜び、この世にはこんなに素晴らしい音楽があり、生きているうちにそんな音楽に出会うことが出来て本当に幸せだなあという喜びを心から感じさせてくれた初めての作曲家でした。
彼の残してくれた沢山の素晴らしい作品のうち、まだ一部にしか触れられていないので、いつか全部取り組みたいですし、一生寄り添っていきたい作曲家です。

(4)私は高校2年生の時にすばるイブニングコンサートで演奏させていただき、それは初めての1時間のソロリサイタルでした。初めての経験だったので、それがどれだけありがたいことで、また責任のあることなのかということを強く感じたのを覚えています。そして何よりも、1時間もあの空間で演奏させていただき、お客様に聴いていただけたことが本当に幸せでした。今回は大ホールでオーケストラと演奏させていただけるという最高に幸せな機会をいただき、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
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posted by subaruhall at 16:38| Comment(0) | 日記